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【就活オススメ本②】亡き母への手紙

2021年1月20日

会報誌で人気だった「忍書房の<明日読む本、お探しします>」シリーズから、今回はオススメの終活本をご紹介します! 

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「亡き母への手紙」KKベストセラーズ 1,300円(税別)

母の日に母の墓前を訪れる『母の日参り』が新たな文化になりつつある。この『母の日参り』に日本香堂、日本郵便、日比谷花壇などの各企業・団体が賛同。さらに広く社会に伝えていこうと、2017年に「母の日参り」パートナーシップが結成された。業界の垣根を越えた6企業・七団体、計13社のメンバー構成で協議を重ね、連携を深めている。 同パートナーシップは、2018年と2019年に、亡き母へ宛てた手紙コンクールを開催した。本書は、それら2回のコンクールで全国の幅広い年代層から寄せられた3000通を超える〝亡き母への手紙〟のなかから受賞作品を中心に編集された。 「遠いあの日を思い出す追憶」、「突然襲ってきた別れへの悲しみ」、「仲が良かったわけではなかったまま別れてしまった悔い」、「亡くなったあなたに似てきた喜び」、「母のようだったあの人への感謝」など、さまざまな母への思いが込められた選りすぐりの50通。 誰もが、共感できる一通があるだろう。第2回コンクールの選考委員長を務めた俳優・草刈正雄氏やグリーフケア専門家の上智大学グリーフケア研究所特任所長・髙木慶子氏のインタビューも交えられている。亡き母との絆を〝前向きに生きる力〟へと転換するヒントが凝縮された本書。 掲載された手紙の一つから

あなたのセーターケイト(女性64歳・栃木県)あなたが初めて私にねだった毛糸玉、覚えていますか。ボーナスでなにか買ってやると言ったら目を輝かせて、「セーターを編みたい」と言ったわね。夕暮れの街を、腕を組んで、手芸店まで急いだわ。棚の中から緑色の毛糸玉を取ってじっと見つめるあなたの瞳は、まるで少女のように透き通っていた。「高価すぎる」と迷っているのを遮って、セーターが編めるだけの玉数を買い求めた。でき上がったセーターは、あなたにとても似合っていた。二人で相談して、胸元に小花を飾ったわね。今、私の寝室の白い戸棚の中に、そのセーターを着て座っている、痩せ細ったあなたがいます。作り笑いの顔には、激しい痛みに耐える苦悩が、透けて見えます。写真に線香を手向けるたびに、胸が締めつけられます。「どんなに苦しかったことか・・・」と。あなたの告別式の日に、遺品としてもらってきたあの緑のセーターを胸に抱き締めたら、耐え切れなくなって顔を埋めました。思いがけず、セーターからあなたの懐かしい匂いがした。胸に抱かれているようで、「おかあちゃん」と、幼い頃のように呼んだら、悲しみが堰を切って溢れ出ました。お母さん、あれからずっと、セーターを仕舞ったまま取り出せずにいます。私、いまだに弱虫なのよ。


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